買い手企業が戦略的に最適な相手を見つける方法

臼井 智

著者

臼井智

日本M&Aセンター 成長戦略開発センター 統括

M&A全般
更新日:

⽬次

[非表示]

新聞やネットなどで「〇〇社が△△社を子会社化」や「今後M&Aで□億円投資」などといったM&A関連の記事を見ることが増えてきていると思います。 今年もまだ始まったばかりですが、更に記録を更新する勢いです。 上場企業や大手企業にとって、M&Aの活用は自社の成長のための手段として定着してきた印象があります。いかに上手にM&Aを活用して成長していくかという点が問われる時代になってきています。 しかし、M&Aは自社単独では実現できません。かならず「相手企業」が必要となります。良い「相手企業」との「出会い」がなければM&Aが成立することはないのです。 数多く発表されているM&Aのケースは、それぞれどのように相手企業との「出会い」があったのでしょうか?考えてみたことはありますか?

お相手企業との「出会い」の類型

出会い別に見たM&Aは以下の類型に分類できます。 A. 元々取引関係や人的関係のあった先で、事業内容や事業規模などについてよく理解している企業、すなわちもともと「出会っている」企業とのM&A B. M&A仲介会社やコンサルティング会社・金融機関から案件を持ち込まれることにより「出会った」企業との、「受け身」のM&A C. 自らの戦略・方針に基づいて調査を行い、相手企業に「能動的」に働きかけ「出会う」ことにより始まるM&A 一部の積極的な企業を除いて、多くの日本企業では、上記のAまたはBで相手企業と出会うM&Aが圧倒的に多いのが現状です。 上記Cのケースが比較的少ないのは、「自ら声をかけても交渉が上手くまとまらないリスク」あるいは「積極的なM&Aがマイナスの形で業界の評判になるリスク」など、能動的なM&A遂行に伴うリスクに対して必要以上に過敏になっている企業が多いからです。

出会いは待っていても生まれない?!

M&A戦略の「要」とは

成功するM&Aのプロセスはおおよそ以下のように分解できます。 1. 自社の成長戦略の立案と、それを実現するためのM&Aの位置づけの明確化 2. 良いM&A相手企業との出会い 3. 相手企業との交渉、企業価値判断、投資スキームの確定、最終契約締結・クロージング 4. 買収後のシナジー促進(PMI) 上記プロセスをシンプルにまとめると、“どのような戦略のもとに”、“どのような相手と”、“どのような組み方をし”、“どのように効果を発揮するか”ということになります。 この一連の検討がまさに戦略的なM&Aの検討といえるでしょう。 M&Aは成約・実現してはじめて戦略手段となります。 M&A戦略がオーガニック成長と根本的に異なる点、M&A戦略を実現するために欠かせないのが、「相手企業」の存在です。相手企業に出会えなければそもそも以降のプロセスが発生することもありません。相手企業との出会いがまさにM&A戦略の「要」なのです。

いかにしてM&Aの実現力を高めるか

良い相手企業との「出会い」がM&A実現の「要」であるならば、いかにしてそれを行うかを検討していかなければなりません。 現在のM&A市場は圧倒的に売り手市場です。 売りたい優良会社1社に対し、多くの企業が買いたいと手を挙げるのが普通となっています。 競争が激しいために、思い描く理想の相手企業との出会いは、待っていてもなかなか訪れません。自ら能動的にM&Aの相手企業との出会いを探すことが、M&A戦略を効果的に実現するためには必要であるといえます。?

臼井による「上場企業」講座も!M&A Conference2018お申し込みはこちら

プロアクティブサーチを含む上場企業M&Aについて詳しくはこちら

著者

臼井 智

臼井うすいさとし

日本M&Aセンター 成長戦略開発センター 統括

1991年に山一證券株式会社に入社、M&A部門に配属。同社自主廃業後、大手証券会社M&A部門を経て2009年に日本M&Aセンター入社。27年間にわたり一貫して国内外のM&A仲介アドバイザリー業務の第一線に従事。上場企業同士の経営統合から中小企業の事業承継案件まで、規模の大小を問わず幅広い業界にて200件超のM&A成約実績がある。

この記事に関連するタグ

「プロアクティブサーチ・上場企業・買収」に関連するコラム

上場企業を子会社化?丸和運輸機関とファイズHD、資生堂の物流M&Aを解説

M&A全般
上場企業を子会社化?丸和運輸機関とファイズHD、資生堂の物流M&Aを解説

物流業3PL分野の有力企業同士のM&Aに注目西川:これまで日立物流の事例を取り上げてきましたが、今年に入って行われた物流M&A事例をもう1件紹介したいと思います。買い手は丸和運輸機関、株を売却したのがファイズホールディングス(ファイズHD)です。どちらも上場しているオーナー系の企業であり、今回TOBが用いられました。ただしTOBの後もファイズHDは上場を維持しています。【M&Aニュース】丸和運輸機

企業買収とは?買収スキームやメリット・デメリットを解説

M&A全般
企業買収とは?買収スキームやメリット・デメリットを解説

事業承継や業界再編への対応策として、企業買収の動きは今後ますます加速することが考えられます。本記事では、企業買収の基礎を整理した上で、その種類やメリット・デメリット、具体的な流れなどについて解説します。この記事のポイントM&Aによる企業買収は、経営陣が他社の株式を取得し、経営権を獲得する手法で、目的には競争力強化や事業多角化がある。企業買収には友好的買収と敵対的買収があり、前者は経営陣との合意を経

M&Aのプロが振り返る2024年のM&Aニュース&2025年予測

M&A全般
M&Aのプロが振り返る2024年のM&Aニュース&2025年予測

日本M&Aセンターの中でも業界経験が豊富な2人が、世の中の企業のM&Aニュースを紐解き解説する「M&Aニュースサテライト」。今回は「2024年のM&Aニュースの振り返りと2025年のM&A動向の予測」をテーマに解説します。※本記事はYouTube動画の内容を編集してご紹介します。解説動画のポイント2024年のM&A市場は大きく変化し、特にTOBやMBO案件が目立つ年であった。特に「同意なき買収提案

株式分割とは?メリット、企業事例をわかりやすく解説

経営・ビジネス
株式分割とは?メリット、企業事例をわかりやすく解説

個人投資家が投資しやすい環境を整備することを目的に、上場企業に対して株式分割を促す動きが強まる中、株式分割への注目度が高まっています。本記事では、株式分割の概要や、企業、投資家それぞれの視点によるメリットやデメリット、手続きの流れ、実際に株式分割を行った企業事例をご紹介します。この記事のポイント株式分割は、企業が発行済み株式を分割し、株式の数量を増やして価格を下げる制度で、投資家の参加を促進する。

TOB(株式公開買付け)とは?目的やメリット、手続きをわかりやすく解説

M&A全般
TOB(株式公開買付け)とは?目的やメリット、手続きをわかりやすく解説

企業買収、組織再編、MBOのニュースで株式公開買付け(TOB)を目にする機会が急増しています。本記事ではTOBの概要、メリット・デメリット、事例についてご紹介します。この記事のポイントTOBは、対象企業の経営権取得を目的に、株主から株式を大量に買い付ける手法で、買付者が価格や期間を公告する。TOBのメリットは、買付者が計画的に買付けを行いやすく、株主は市場価格より高い価格で売却できる点がある。TO

「プロアクティブサーチ・上場企業・買収」に関連する学ぶコンテンツ

買収先の探し方

買収先の探し方

買い手の相談先でご紹介したように、M&A仲介会社などパートナーを選定したら、いよいよ買収先の候補企業を探すステップに移ります。本記事ではM&A仲介会社を通じてお相手探しを行う主な方法について、日本M&Aセンターの例をもとにご紹介します。この記事のポイント買収先の探し方には「譲渡案件型」と「仕掛け型」の2つがあり、譲渡案件型ではノンネームシートや企業概要書を通じて情報を開示し、秘密保持契約を締結する

買収先の本格検討・分析

買収先の本格検討・分析

買収先の探し方でご紹介したように、買い手はノンネームシート、企業概要書で買収先についてM&Aを進めるかどうか検討します。本記事では、買い手が企業を検討する際流れと、陥りがちな注意点についてご紹介します。この記事のポイント買い手がM&Aを進める際、最初にノンネームシートや企業概要書を通じて対象企業を検討し、提携仲介契約を結んだ後に質疑応答を行う。M&Aの目的を明確にし、買収先にすべての問題解決を求め

買い手にとってのM&A。目的や留意点とは?

買い手にとってのM&A。目的や留意点とは?

買い手の買収戦略には様々な目的があります。M&Aの成功に向けて、押さえておきたいポイントを確認していきましょう。この記事のポイント買い手がM&Aを行う目的には、市場シェアの拡大、事業領域の拡大、事業の多角化、人材獲得・技術力向上、効率性の向上がある。買収により、企業は迅速に成長を加速し、顧客ベースや販売チャネルを拡大することができる。M&Aにはコストや中長期的な取り組みが必要で、成約後の経営統合計

「プロアクティブサーチ・上場企業・買収」に関連するM&Aニュース

ソトー、ジェノとG-STAGE・JAPANを買収へ

株式会社ソトー(3571)は、株式会社ジェノ(大阪府大阪市)及びG-STAGE・JAPAN株式会社(東京都渋谷区)の全株式を取得し、完全子会社化することを決定した。ソトーは、各種繊維製品の染色加工、テキスタイルの製造及び販売、不動産事業を行っている。ジェノは、メンズアパレル製品の卸売・小売・OEM事業を行っている。G-STAGE・JAPANは、自社ブランド「G-STAGE」製品の販売、シャツ製造を

タカラバイオ、空間解析用試薬開発の米Curio社を買収

タカラバイオ株式会社(4974)の100%子会社であるTakaraBioUSAHoldings,Inc.(米国カリフォルニア州、以下:TBUSH社)は、CurioBioscience,Inc.(米国カリフォルニア州、以下:Curio社)の株式取得を決定し、買収合意契約を締結した。タカラバイオグループは、アカデミアや企業のバイオテクノロジー研究者向けに研究用試薬、理化学機器、受託サービスを提供してい

米ベインキャピタル、航空機内装のジャムコを買収へ

米投資ファンドのベインキャピタル(BainCapitalPrivateEquity,LP)は、傘下の株式会社BCJ-92を通じ、株式会社ジャムコ(7408)の普通株式を公開買付け(TOB)により取得することを決定した。TOB完了後、ジャムコは非公開化する。また、TOB完了後、現在約33%を保有する伊藤忠商事株式会社、約20%を保有するANAホールディングス株式会社、約7%を保有する昭和飛行機工業株

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース